芸術鑑賞・茨木工科高校のみなさん、ありがとう!
2015年07月21日
7月15日(水)は大阪府立茨木工科高等学校の視聴覚行事・芸術鑑賞でした。 先月の倉敷工業高校や昨年京都明徳高校へ向かった行程と同じ、ひたすら高速道を走って大阪へ向かう旅です。 台風11号の影響が心配されましたが、歩みの遅い台風がもたらしたフェーン現象でしょうか、なんと気温35度にもなる強い日照りとニョキニョキと広がる入道雲に導かれた、快適なドライブでした。
茨木工科高校は、機械系の機械技術専科、生産技術専科、機械制御専科、電気系の電気技術専科、電子情報通信専科、環境化学系の環境システム専科、化学システム専科の7専科を擁する工業高校で、通称は「茨工」(いばこう)とよばれ市民に愛されている高校です。 1年生のうちは全ての系(システム)を総合的に実習し、2年生から希望した系を専門的に選べる仕組みとなっています。
ところで事前に茨木工科高校のHPを拝見し、T校長先生の「校長室だより第72号」を拝読して大変感銘を受けました。それは「あいさつ」のことでした。以下に抜粋して転載させていただきます。
―「あいさつ」の「あ」はあかるくの「あ」です。する方も される方もあかるく、元気になるからです。
「あいさつ」の「い」はいつもの「い」です。いつもあいさ つするから親しみが生まれます。そうすると自然にあいさつ する相手のことを大切にしようとする気持ちが出てきます。
「さ」はさきにの「さ」です。相手にあいさつされたから お返しするのではなく、こちらからしようということです。出会った相手がさきにあいさつしてくれると、うれしい気持ちになりませんか。そして「つ」はつづけようの「つ」です。初対面でも、慣れた相手でも常に続けるのがあいさつです。続けることによって、人の心と心がつながります。
「あいさつ」の「つ」は人と人の心をつなぐ「つ」と言ってもよいでしょう。―
拝読して、さりげなく、素晴らしい訓えだと思いました。「あいさつ」なんて、誰にもできるのに、考えてみれば、時折投げやりになっていることって、心がこもっていないときって、ありませんか?いやはや私たちは猛反省です。 子どもでも大人でも、だれにでもできて、そして人間としてもっとも大切なコミュニケーションツールである挨拶の重要さを、私たちは再認識させられました。ありがとうございました。 もちろん私たちは茨木市民会館を訪問した際、明るく、元気な声で会館の皆様にご挨拶しましたよ。
その茨木市民会館は、別名をユーアイホールといい、客席数997席の大ホールのほか、小ホール、会議室等を備えた施設です。茨木市役所の前にあり抜群のアクセスを誇る文化施設でした。1969年の竣工ということでしたが、なるほどさすがに46年間の重みは感じます。 思えば46年間、幾多の出演者がこの舞台で笑い 泣いたことでしょう。 多くの出演者の汗と涙が染みこんだ舞台は伝統の 風格を備え、セピア色に鈍く光っていました。 ハイテクを駆使した斬新な施設も良いですが、 茨木市民会館のような舞台も私たちは好きです。 すてきな舞台でしたね。 ところがこの茨木市民会館も本年12月末には 閉館予定だと聞きびっくり、寂しい限りですが、 時の流れには逆らえません。長い間、ご苦労さまの気持ちをこめて、私たちは舞台をゆっくり踏みしめたものです。
さて前日に仕込み作業を終えた私たちは、準備万端整えて開場を待ちました。 今回の演目は「中国文化芸術夢公演」。生徒のみなさんのキラキラした笑顔が楽しみです。 ご担当のH先生との最終打ち合わせも済まし、多くの先生方や、生徒会のみなさんの先導で生徒のみなさんが入場を始めました。しーんと静まり返っていた会場が一気に活気づき、だんだんと熱気を帯びてきます。と同時に、出演者や私たちスタッフもだんだんと気分が高揚してきます。 やがて繰り出す出演者の「芸」をマックスに高めてくれるのは、実は鑑賞するお客様=生徒のみなさんや先生方や保護者の方々なんですよね。 観る側と魅せる側が一体となったとき、それは笑顔と歓声でまさに沸騰します。
たとえば開演前の客席。猛暑の中、汗を拭き拭き来てくれた生徒のみなさんの首筋にはタオルやハンカチがあり、客席に深く座って足を投げ出している生徒や、逆に礼儀正しく背筋をピーンと伸ばして座っている生徒、隣の席の友だちとおしゃべりに夢中になっている生徒など、それはもういろいろ、よくある光景です。
やがて開演。期待と緊張の一瞬です。生徒のみなさんは少し居ずまいをただします。緞帳が上がり、煌々としたライトの中、演技が始まりました。さっそく手拍子、笑顔、歓声が出始めます。それにつれて生徒のみなさんの姿勢がだんだんと前のめりになってきます。手拍子が、歓声が、あるいは沈黙の瞬間が、まるでマスゲームのように全員揃ってきます。そして笑顔と歓声が波の満ち引きのように、まさに沸騰します。これが中国文化芸術夢公演。生徒のみなさんと出演者が、まさに一体となったんですね。
終演後、こんなことがありました。 客席に出向いてご担当のH先生にご挨拶をしていたら、横に女子生徒が3名いたのです。みなさん口々に「素晴らしかったです。」と感想を述べてくださいました。そして出演者に会いたいというのです。 「誰に会いたい?」口々に、 「あの体の軟らかい若い女性。」こちらはふざけて、 「明日から一生懸命勉強するかい?」みなさん即答で、 「ハイ!します!」 「OK,待ってて。」 やがて若い女性出演者が現れると、彼女たちは喜んで次々に飛びつき、女性同士、ハグの連続でした。感激した女子生徒たちは全員涙ぐんでいます。微笑みながらその涙をそっと指先で拭う出演者。とても美しく、心がジーンとする光景でした。もちろんそばにいらっしゃるH先生や他の先生方も優しく微笑んでいらっしゃいます。
実はこの出演者は昨年初めて来日。全く日本語が 分かりませんでしたが、その素直な性格と演技の確 かさを認めて今年5月に再度招聘したのです。 彼女は日本文化に溶け込もうといま日本語の勉強 を始めています。でも今のところ明確にマスター しているのは、「はい」と「ありがとうございます。」 と「一生懸命頑張ります。」と「またよろしくお願い します。」と「美味しいです。」 努力家の彼女ですから、やがて日本の若い女性たち のように、一人でウィンドーショッピングに出かける日も近いでしょう。
またこんなサプライズもありました。 「皿回し」の演技に追加して、体を後方に反らし床上にあるバラの花を口にくわえる動作を、今回突然、前述の彼女に提案しました。無理だと断るかな? できるかな? なんと彼女はやったのです。
それもヤマ台という1.8m四方、高さ60cmの平台の上に乗り、後方に反り返るのですが、高さ60cmの平台の縁に置いた両足のかかとから、なんと下へ20cmのところに設置したバラの花をみごと口でキャッチしたのです。しかも両手では計8枚のお皿が回転し続けています。 本邦初公開、茨木工科高校の公演で初めて魅せた超ウルトラ演技の瞬間でした。女子生徒のみなさんが感動したはずです。
しかし、私たちは知っています。 彼女の若さ、筋肉の軟らかさ、挑戦心、そしてひたむきな努力を重ねる性格…。 雑技団員ですから、要求された技ができるか、できないか、瞬時に判断しますし、私たちも無理な要求はしませんが、“やってみよう!”という彼女の向上心が、あの技を舞台で誕生させたのです。それは猛暑の中、来てくれた茨木工科高校の生徒のみなさんと、今年で閉館になるユーアイホールへのささやかなプレゼントでした。もちろん開演直前までひそかに彼女が何度も練習していたのは間違いありません。
茨木工科高校で初めて採り入れた技が女子生徒の感動の涙を誘ったとすれば、それは以心伝心、生徒のみなさんと出演者が、まさに一体となったのです。 そして生徒のみなさんは、肉体の限界に挑戦し、集中力を高め、己を信じて努力する姿を目の前で鑑賞しながら、何かのヒントを得たかもしれませんね。
楽しかった茨木工科高校視聴覚行事・芸術鑑賞。 このような機会を設けてくださったご担当のH先生をはじめ、多くの先生方や保護者の方々に心から御礼申し上げます。 そしてありがとう、ほんとうにありがとう茨木工科高校のみなさん!
ところでこのブログを発見してくださった方は、ぜひ公演の感想や印象を書き込んでくださいね。生徒のみなさんの率直なご意見を教科書に、私たちも日々勉強しますから。
それではまたお会いしましょう。
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