ツバメ
2018年08月29日
いつ頃だろうか、気が付けばせっせと木の枝や枯れ草を咥えて親ツバメが巣作りに励みだした。
弊社の隣のビル1F、屋内駐車場の支柱の角である。
毎朝、少しづつ大きくなる巣を見てその緻密な作業に感心した。
やがてある日、ぴーぴー啼く三羽の子ツバメを発見した。
観察すると、親指ぐらいの小さな体ながら、親がエサを運ぶと、けたたましい声を上げ、分厚い黄色の大きな口をめいっぱい開けてねだった。
親が立ち去ると、途端に静かになり目を閉じて動かなくなる。
これの繰り返しである。
よく見ると三羽のうち、左に陣取る子ツバメの体が一番大きく、真ん中がその次、一番右にいて支柱の角に押しやられたような子ツバメが一番小さかった。
生存競争のすさまじさを見るようである。
しかしこういうことも発見した。
次々とエサを運んでくる親ツバメは決して左や真ん中の子ツバメばかりにエサを与えているのではない。
自身も羽ばたきに苦労しながら支柱の角にいるチビちゃんにも均等にエサを与えようとしていたのだ。
やがて子ツバメたちは大きくなった。
ある日、左の子ツバメが巣立ちした。
次の日、真ん中が飛びたった。
その3日後、寂しそうだったチビちゃんも飛びたった。
いずれもすぐそばの電線に、である。
折からの強風にあおられながら、彼らは懸命に小さな足で電線を掴み、羽ばたきしながらバランスをとっていた。
日が暮れだすと、彼らは巣に帰ってくる。
そして静かな眠りについた。
翌朝はまた飛び立ち、今度は行動範囲を広げて、あちこち冒険するようになった。
そんなことを繰り返していたある日、ぴーぴーと鋭く啼く彼らの声がしなくなった。
旅発ったのであろうか。
「行ってしまったか…」、
一抹の寂しさを感じていたある日、ぴーぴーと鋭く啼く声が耳に入った。
外に出てみると、ビルの谷間を瞬く間にスイスイ飛ぶまわる彼らを発見した。
「おー、まだいたか」。
ツバメはこれからいろんなことを学びながら南に向かうのだろう。
しかし君たちの故郷は、隣のビル1F、屋内駐車場の支柱の角なんだから。
また来年、帰っておいで。
スイスイ飛びまわる彼らの前途を祝してバイバイ。
コメントを残す