伝説の猿・ベンツ
2013年10月10日
2013年9月半ばから2週間ほど姿が見えなくなり、10月1日に発見された大分市・高崎山のボス猿「ベンツ」は4日、山に帰されたが、5日朝、群れの先頭に立ち、尻尾を悠然と上げてエサ場に降りてきた。
ベンツについては、一度離れた群れの仲間から受け入れてもらえるのか心配されていた。しかし、群れに戻ったベンツに、No.2のゾロメが毛繕いをしたことから、群れはベンツをボスとして再び迎え入れたのだ。
ボス猿が群れから離れた後に返り咲くということは、高崎山60年の歴史の中でも例はなく、ベンツはまた新たな伝説を作ったといえそうだ。
高崎山の猿はA群、B群、C群に分類される。その掟は厳しく、強力なボス猿に統率されて暮らしているのだ。
その中でもベンツは高崎山でもっとも有名な猿である。彼は1987年、9歳の若さで、その類まれなる度胸と統率力を評価されB群のボス猿に就任した!
B群のボスの座について3年目、ベンツはある日、800頭の大世帯C群にいる猿リズに恋をした。浮気でも遊びでもなく、その恋は本気で一途だった。ベンツはあっさりとB群を抜け出し、C群と行動を共にするようになった。
しかしC群も、ベンツがB群のボスだったと知っているので、なかなか受け入れてくれず、やっと受け入れてくれた時、ベンツは最下位の序列に甘んじていた。それでもベンツは辛抱してC群の猿リズとの恋を成就させ、C群の片隅でひっそりと暮らしていた過去があったらしい。
2002年6月「高崎山」最大の勢力を誇り、餌場を独占しようとしていたA群と史上初の大抗争が勃発した。
A群は最大勢力を背景に餌場を独占しょうと画策していた。C群の当時のボス「ゾロ」はA群の最大勢力を 恐れ手を出せない・・・。
そのころC群は700頭あまり、A群は800頭以上もいる、世界最大の猿の群れだった。
C群とA群は、約1年に渡って にらみ合いを続けた。お互いに、オス猿たちが前列に並び、その後ろに他の猿が並ぶという、昔の合戦さながらの配置で、睨み合っていたそうだ。
睨み合いが続いていたあるとき、ベンツが一匹でA群の中に果敢に飛び込んでいき戦闘開始。投げる、噛み付く、蹴っ飛ばすの大暴れ!
C群の血気盛んな若者猿もベンツに従い突入していった。A群は山に逃げ帰り、ベンツは次の日も大暴れをしたので、また逃げ帰り・・・ついに消滅。
高崎山始まって以来の大抗争に終止符が打たれたのだ。
32歳でC群でもボス猿に就任!
誰もがベンツの度胸と統率力に敬意を払いC群の新しいボスに推挙した。
抗争を目の当たりにし、ともに戦った若猿たちから、ベンツはもっとも厚く信頼されていたのだ。リズとの恋を成就させ、ベンツは約21年かけて最下位から再びトップに上り詰めたのである。2つの群れでボスザルとなったのはこのベンツだけである。
その高崎山には思い出がある。
今から18年前、弊社が招聘した中国山東省京劇団の宣伝をかねて、「孫悟空、日本の猿とご対面」というコンセプト?で、舞台衣装を着けた京劇役者と一緒に高崎山を訪ねたのである。
突然現れた派手なメイクの孫悟空に、観光客も、もちろん猿たちも大騒ぎ。その模様を大分県内のテレビ局がこぞって中継し、地元新聞社がニュースとして流したから、大きな話題となった。もちろん公演は大成功。
思い出せばその時、突然、孫悟空役者の前面に立ちふさがり、怖い目つきで威嚇する大きな猿がいた。さすがの孫悟空も青ざめて立ち尽くすしかない。慌ててその猿を制止した高崎山の係りの方から、「あれが有名なベンツですよ」と教えていただいたことがある。ベンツは不審な侵入者・孫悟空と戦おうとしていたわけだ。
ひときわ体の大きなベンツは、現在サル年で35歳、人間でいえば110歳だとか。ベンツよ、長生きして、また伝説を作ってくれよ。
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